サボタージュ
自分の価値観にそった選択や行動ができていれば、私たちの生活や人生は充実感に溢れるものとなります。けれども、充実感を求める「願い」の気持ちよりもさまざまな「恐れ」が色々な形であらわれて、「本当にしたいこと」を邪魔することがあります。これを「サボタージュ」と呼びます。
サボタージュは、イライラや、怒り、退屈、あきらめ、自己欺瞞、自己犠牲、無関心、不自然あるいは行き過ぎた楽観主義、そうしてそれらを正当化しようとする心やアタマの働き・・・などなど、色々な形で表れます。
例えばもっと定期的に運動しようと思いながらなかなかできないクライアントさんの例(少し詳細を変えてありますが、ご本人の許可をいただいて書いています)。
もっと運動した方が良いというのは分かっているし、自分もしたいと思っているけど、いまひとつ行動につながらない。その行動を止めてしまう「何か」は何か、という問いに対する回答から見えてきたのは「サボタージュ」の存在。(コーチングのギョーカイでは「サボ」と呼んだりします。)
だって。
その「サボ」が言うんです。
だって
仕事が忙しい。
だって
たまの休みはのんびりしたい。
だって
休みだって忙しい。
だって
今度の週末にすればいいし。
だって
最近運動してないから、いきなりすると、しんどいし。(これ、個人的にウケました。笑)
この時コーチから
「仕事が忙しいからって健康がまず第一でしょう」とか
「そんなこと言ってこの週末しないんだったら、また来週もしなくなっちゃうでしょう」とか
「いや、てか、運動してないから、できない、っておかしいでしょう。だからこそ、すこしずつでも始めた方がいいんじゃないですか」とか
あれこれ言っても、だめです。というか、それはコーチングではありません。
常套手段のコーチング・スキルとして、その「サボ」を擬人化(と言っても、別に「人」である必要はないのですが)してもらうというのがあります。イメージだけでもいいのですが。そのサボの声はどんな声なのか、そいつはどんな形や姿をしているのか、そしてどこにいるのか、などなど、コーチの質問に沿ってイメージしてもらいます。
自分のおなかの中にいる、なんて場合もあれば、自分の上にぷかぷか浮いている、とら、背後からぺたりとくっついている、とか、色々出てきます。
そして、イメージがある程度分かったところで、私がよくするのは、私がその「サボ」を演じてみるというものです。
イメージに合わせて(笑)、ささいてみたり、投げやりな言い方をしたり、えらそうな言い方をしたり、媚びた言い方をしたり、とにかく、私がサボになってクライアントさんに言うのです。
「だよね〜。仕事忙しいもんね。運動なんてできないよね〜」とか
「あ、そうそう、来週したらいいよ」とか
「いやいや、最近全然運動してないんだから、いきなりするとやばいよ。今日は休もう」とか。
容赦なく、迫真の演技(笑)をすることが大事です。
そしてしっかりと、クライアントさんに自分のサボの声を聞いてもらうのです。
だから、私はクライアントさんがかなり「むかつく」ような言い方をすることも、あります。すごくキツい言い方をして、その瞬間、クライアントさんがホンキで凹むこともあります。
それから、クライアントさんに問います。
あなたのサボ(=ここでは私)に対して、なんて言い返したいですか、と。
すると
「仕事が忙しくても、身体がやっぱり資本だから」とか
「そんなこと言ってたら、結局来週もしないよ」とか
「運動してないから、今日はしない、っておかしいよ。だから今日するんだろう」とか。
ま、そういう風にクライアントさんは言い返すわけです。
このクライアントさんのケースではないですが、私の迫真の演技のサボに対して「私はそんな人間じゃない!」とムキになって言い返したクライアントさんもいます。
そう、分かってるんです。クライアントさんは分かってる。
ちゃんと、自分がどうしたいのか、どうするべきか、分かってる。
だいたい、上記の回答も、普通に考えればしごく当たり前のことですよね。
でも、それを、自分の口で実際に言って、それを自分で聞く、ということ。
それが、肝です。
不思議なもので、サボに行動を阻まれている時、当たり前のことや正論も他者(この場合、私)に言われると、「だって」「だって」とますますサボタージュをパワーアップさせてしまうのです。
人に言われても、しない、ってやつです(ま、うちの息子の宿題と似ているような・・・笑)。
でも、自分が自分に言われると、どこかで分かっていたけど目を背けていたことが、「分かる」んです。腑に落ちるとでもいうか。言い訳出来なくなるというか。
そしてクライアントさんは自分の発言でもって、自分自身に大きなインパクトを与えることができるのです。
でも「自分の口で実際に言って、それを自分で聞く」ということは、一人ではできないし、日常の会話ではなかなかできません。
ためしに、運動じゃなくても、ダイエットでも、英会話でも、なんでもいいので、「しようしようと思っていてできないこと」について、ご家族やお友達と話してみてください。
多くの場合・・・あなたが聞くことになるのは、彼らの意見やアドバイスや励まし(当たり前です)。そしてあなたはそれを聞きながら「分かってる<けど>」「だって」と心のなかでつぶやいているでしょう。そして口に出すかどうかは別として、様々な言い訳や反論で自分の中をいっぱいにするでしょう。
あなたが聞くべきは、彼らの声じゃなくて、あなたが聞かないふりをしているあなたの本当の願いです。
聞こえないふりをしている(だって聞こえない方が楽だし)あなたの本当の声。
そこで、コーチが登場するというわけです。
コーチがあなたに聞いて欲しいのは、コーチの声ではありません。
あなた自身の声なのです。
あなたの声。
聞いてみませんか。

