体を動かすと心も動くことがある

*クライアントさんの許可を得た上で記述しています。

コーチングをしている途中で、クライアントさんに「体を使って」もらうことが結構あります。色々なイメージをしてもらう時に、そのイメージ通りに体勢を作ってもらったり体を動かしてもらう方がイメージがわきやすい、というだけでなく、体を動かすことで、クライアントさんの何かが文字通り「動く」と思うからです。実はそういう風にコーチングのトレーニングを受けたときに習ったんで実践してるっていうことなんですけど(笑)、ちゃんと体を動かせばやれば(←ここポイント。恥ずかしがったり適当にやると、効果がないどころかが逆効果。)ちゃんと心も動く、というのがこれまでの経験を通した実感です。

以下、「体を使って」もらってみた実際のセッションの様子についてご紹介します。このセッションは、やっているときも、終わったあとも、「なんか面白い体験だ(った)なあ」と思ったのですが、クライアントさんもそう思ってくれていて、このブログにそのときの様子を紹介することについても快諾いただいています。

その日のクライアントさんは、非常におおざっぱに言うと、現在の煮詰まった状況を脱したい、でも、この先どうしたらいいのかはっきりと分からない、という感じ。それまでにも「どうなりたいのか」「どうしたいのか」について話しをしたことはあって、自分の理想は分かっているのだけれど、そこに行くまでの道のりが見えない、ということでした。そして現在の状況がとても苦しそうでした。

その苦しい現在の状況について、「いまどういう場所にいるのか」のイメージを尋ねたところ、険しい崖を登っているような感じ、ということでした(←ちなみに、これ、『比喩』を使うというコーチング・スキルのひとつになります。)この質問をしたときにあらかじめ計画していたわけではないのですが、じゃあ、実際に険しい崖を登っているような感じ、っていうのを、体を使ってやってみませんか、とご提案して、やってみてもらいました。そしてクライアントさんには実際に最初は座っていたベッドの上に立って崖を登ってる格好をしてもらいました。そして本当に、いま、崖を登っている途中であるようなイメージをしてもらって、そのイメージに浸りきれたと思ったら教えてください、と言って、私はしばらくただ待っていました。

イメージに浸りきったところでクライアントさんが知らせてくれたので、さて、具体的にどんなかっこでいますか?と聞いたところ、クライアントさんは右足を小さな足がかかりにかけてる自分を体現してました。つまり右足が少し宙に浮いている状態になっていたわけです(だってそこにほんとの崖はないから)。そして実際にそういう状態を体現してもらった上で、その感覚をできるだけゆっくり味わってもらうようにリクエストします。ちなみにこういう時は、私も一緒に電話やスカイプのこっち側でクライアントさんと同じような格好になります。ならなくてもいいんですけど、私はコーチングしてるうちに一緒にやっていることが常です。(こういう時、映像のないスカイプ通話はかえって「やりやすい」面があります。)

少ししてから「今、どんな感じですか〜?」と尋ねてみると「み、右足がぷるぷるしてきました〜」とのこと(笑)。分かる分かる。だって私の右足もぷるぷるしてきたもん(笑)。

私はこの崖、登りたいですか、降りたいですか、それともそのままそこにいたいですか?と聞いてみました。クライアントさんは、「登りたい」ということ。(クライアントさんのイメージの中で)先に見えているてっぺんまで、登りたいということです。そこで私は、じゃあ、登るためには、まず最初の一歩として、次にどうしたらいいと思いますか?と尋ねました。クライアントさんの答えは、この右足を小さな足がかりからえいやと持ち上げて、ちょっと上の方にあるもっとしっかりとし足がかりに移したい、ということ。でもそれをするためには、はい、えいや!と筋肉を使わないといけません。

じゃあ、右足をえいやと持ち上げて、次の足がかりに右足を運びましょうか、とうながすと、「はい、やります」ときっぱりはっきりお返事なさる。えいや(とは別に言ってませんが)と、ぷるぷるしていた右足をさらに高く持ち上げる(私もこっち側で一緒に持ち上げる)。「(右足を)かけました〜」とのことですのでそこでもう一度、じゃあ今はどんな感覚ですか?とお尋ねすると「思っていたよりもイケました」というようなお答え。このあたりでクライアントさんも私も筋肉的に限界が来たということもあり、じゃあ、その崖からこちらの(?)世界に戻ってきてください、というように伝えました。

ロッククライミングを終えて人心地ついたあと、再びこの体験についての全般的な印象についての簡単な応答をして、私はクライアントさんに尋ねました。今、えいやと右足を上げて次の足がかりにもっていったことを、今の現実の中で行うとしたら、どういうことになるでしょうか、と。クライアントさんは「そういえば実はずっと考えていた」という前置きのあと、あることについて上司の方ときちんと話す時間を持つこと、とお答えになりました。

現在の煮詰まった状況を脱したい、でも、この先どうしたらいいのかはっきりと分からない、というところから「まず一歩進む」ための具体的な行動(計画)が明らかになったわけです。ここまできたら、ではいつまでにその行動を起こしますか、ということを尋ねて、クライアントさん自身に「締め切り」を決めてもらい、実際に行動に移す計画をより具体的なものとしました。

また、この(苦しい)ロッククライミングの体現の中ではっきりとしたことがもうひとつありました。それは「私は上に登りたい」ということ。降りる選択肢はありました。上手い具合に体勢をととのえてそこでとりあえず休憩する選択肢もあったと思います。でも、クライアントさんは登ることを選んだんですよね。

その次のセッションの時に、「あの右足を上げるのなんですけど」という枕詞でもって、その上司の方と懸案の事項について話しをする時間をとったというご報告を受けました。そのとき、おっしゃっていたのは、そのロッククライミングがおもしろかった、ということと、「ああいうことをすると、感覚が記憶に残りますね」ということ。記憶に残るとういことは、セッションの時の疑似体験が現実の生活でもより起こりやすくなる、ということにつながるのではないかと私は思っています。つまり、現実においても「右足をもっと上げる」ことを再現できる、ということではないかと。

心が動かないと体も動かない。そうかもしれません。でも、心がなかなか動かないなら、まず先に体を動かしてみるのも、おすすめです。