偶然を生かす

10年間大学の教員をしていたので、卒業式や謝恩会などと言う機会を普通の人よりは多く経験しています。そういう機会では、教員が学生に向けたスピーチor挨拶をすることが多いですが、他の教員の方が学生に向けた言葉に中には、同僚の私の心に響くものもありました。

いくつか思い出せるのですが、そのひとつは「偶然を生かせ」というもの。

この言葉を学生に送った先生は、いわゆる「スピリチュアル系」な人ではまったくなくて、むしろとても科学的、現実的、論理的な方でした。そしてひたすらアカデミック一筋、という方ではなくて、大企業に勤められた経験や転職の経験もお持ちで、どちらかというとじぐざくとした道をたどる中で研究者としても実績を積まれて、またしかるべき筋の縁もあって、国立大学の教授になった、という方でした。

もう何年も前のことなので、正確には覚えていないのですが、その方曰く、組織に入れば自分が望む部署に配属されるとか、やりたいことができるようなポジションを与えられるなんてことは、ほとんどない。つまり、私たちはあくまで組織のコマに過ぎなくて、「たまたま」何からの部署に配属されたりポジションを与えられたりする。

つまり、私たちは「偶然に左右される」存在である。

だったら「偶然を生かす」しかない。

そして与えられた部署やポジションで、その「偶然を生かしながら」その場でがんばっていれば、次の、あるいは次の次の「偶然」が来る。それまでに、自分がやりたいことを何らかの形で地道に続けてそれを発信していれば、自分が「これだ」と思うような「偶然」が必ず来る。そうしたらそれを、しっかりと掴め。

こんな感じのお話をされたように思います。

シンクロニシティ、という言葉、つまり意味ある偶然、という言葉、私も好きですし同感する部分もあるのですが、一方でそればかりに頼って「これもあれも、どれもこれも、すべて運命だわ〜」みたいになるのって、ちょっと「ふわふわ」してて、ううん・・・どうなんでしょ・・・と感じることもあるのです。

でも同じ「偶然」についてのお話であるにも関わらず、この方のお話はとても地に足のついた感じがしたし、すごく現実感があって、説得力を感じました。

社会に出て、特に会社組織に入れば、自分が望む部署や職種で働けることの方が少ないですよね。卒業して社会にでてゆく学生たちに贈るには、とてもいいお話だなあ、と思うと同時に、学生たちにはこのお話の本当の価値がまだ分からないかもしれないなあ、とも思いました。

でも何人かの学生の頭のどこかには残っているんじゃないかなと思うし、実際私の頭の中には今もしっかりとこの時の言葉が残っています。
そして時折「なるほどね〜・・・ほんとにね〜・・・」と、ふか〜く感じ入り、励まされたり、また、反省を促されたりしています。

この世に「偶然」はない。全部「必然」だ、という言い方がありますよね。
確かに、そうだとも、思う。

でも、結局は「偶然」を「生かす」ことができるかどうか、つまり「偶然」を「必然」にできるかどうか、ということじゃないかな・・・と、その方のお話を思い出して、思いを巡らせています。

あなたの人生や生活やお仕事の中で巡り会う「偶然」。

生かしてますか?

放っておいてますか?

それとも踏みつぶしてますか?