あなたがあなたに対してごめんなさいー你對不起你(ニードゥイブチニー)

30歳くらいのころ、10ヶ月ほどの期間、日本語を教えたりしながら台湾の台南という町に住んで中国語を勉強していました。国立成功大学という大学に付属の語学センターに毎日通っていました。

せっかくの機会だし!と、私は成功大学の大学生のクラブに入ろうと思って、茶藝(台湾式茶道みたいな感じですが、もっとカジュアルな感じかな)と太極拳のクラブに首を突っ込んでみました。

茶藝クラブの話はまた後日に置いておいて、太極拳の方ですが、よく台湾の公園でおとしよりがラジオ体操のノリで行っている感じをイメージしていたのですが、そこは大学のクラブだけあって(というか、ほとんど「体育会」だったような・・・)、全然違う!それはまさに「戦い系」。それも型だけとかやる、とかじゃなくて、「そ、そんなとこ当てたら、い、痛いっす!」みたいなノリ。おまけに、見渡すと、げげ、男子しかいないじゃん!(それもみんな二十歳前後。笑)

最初にクラブを訪ねて行った時に、「いいよ、いいよ〜」てな感じで一回り以上も年上の留学生の私を快く受け入れてくれた(と思う)ので、そんなこととはつゆ知らず。おまけに太極拳は朝練習するものということで、朝も早くて、バイクで30分かけて町外れから大学に通っていた私にはこれもまた大変。

それでも最初のうちはなんとかがんばっていたものの、だんだんと、ちょっとづつ、足が遠のくようになってしまったのです。

そんな風にドロップアウトしていく過程で、どう考えても「浮いてる」私に丁寧に指導してくれていた親切なクラブの代表のような男の子に対して申し訳なくて、「(最近さぼってて)ごめんなさい=對不起(ドゥイブチー)」と言ったら、その彼が優しいちょっとだけ困ったような笑顔で私に「你對不起你(ニードゥイブチニー)」、直訳すると「あなたがあなたに対してごめんなさい」つまり、自分に対して申し訳ないでしょ、てなことを言ったのです。

こうやってさぼっちゃうことで、誰の不利益になるかというと、その彼の不利益のじゃなくて、私自身の不利益になりますよ、ってことを、その一回り以上も年下の台湾の若者が私に静かに言い放ったのです。

日本語だとちょうど当てはまるニュアンスの訳がないと思うのですが、英語だとYou are sorry for yourselfのような感じでしょうか。

うあ〜〜。その通りです〜〜。と素直に感じました。そしてとっても恥ずかしかった。なんというか、適当に謝って済ませておこう、とした心根と振る舞いに対して、がつん、と真実を突きつけられたような。同時に、なんだなんだ、この目の前の彼、すごくないか??と驚いていました。

多分大学3年生か4年生だったその彼は、まだ二十歳そこそこのはず。なんなの、この「哲学者」ぶりは??

それはさておき。

「あ〜、しまった」とか「失敗した」とか「思うようにできない」と思う時、そこに自分以外の誰かが何からの形で関わっている場合に、相手に謝罪することよってとりあえず気は済むというか、かっこはつく。けれども実は、まず謝るべきは自分自身に対して・・・そういうこと、あると思います。

自分で自分の決めたことを守れなかった、とか、自分を大事にしなかったとか、自分がベストを尽くさなかった、とか・・・色々。でも、そんな自分と向き合う方ことの方が辛いしイタいし難しいから、相手に対して謝罪することで、自分自身から目をそむける・・・そんな感じ。

その相手に謝る必要がない、ということではなくて、相手に対して謝っちゃうことによって、事柄や問題の本質、すなわち、自分自身の中にある何か、からは逃げることが可能になる・・・

そういうことって、ないですか?

あ〜〜、私は今でもあるな〜〜。そういうこと・・・ToT

あの時の彼は、今ごろ、どこで何をしてどういう風に生きているのだろうか・・・ふと思い出す時に、その時の恥ずかしい気持ちと、彼に対する驚嘆の気持ちがよみがえります。