他信
「他信」というのは聞き慣れない言葉だと思います。実際、広辞苑などにも載っていません。「他信」は「自信」と対になる言葉として、使います。
「他信」はコーチングのスキルというよりは、コーチングそのものと言ってもいいほど大事なことだと私は思います。
コーチがクライアントさんに対峙するときに最も大事なこと、それは、クライアントさんを「信じる」ことです。クラインアントさんが自分自身のことを信じることができないとしても、それならば余計に、コーチがクライアントさんを「信じる」。
ここから全てが始まる、と言っても過言ではありません。
誰かが(この場合コーチが)自分を信じているという感覚、すなわち「他信」、が繰り返され深まることによって、クライアントさんはその他信を内在化して自分のものとしてゆくことができるようになります。つまり「自信」へとつながるのです。
と、ちょっと小難しく書いてしまいましたが、要するに、誰かが自分を信じてくれってことが何よりの力になる、ってことです。
じゃあ、コーチはどうやってクライアントさんを信じるの?というか、そんな簡単にほんとに信じることができるの?信じてる振りをしているだけなんじゃないの?などとという疑問がわくのではないでしょうか。
コーチである私自身が、クライアントさんを「信じきれない」と思う時は、そのことを率直にクライアントさんに伝えるのが、大切であると同時にコーチの責任であると思っています。またこれは、コーチとしての職業倫理にも関わることです。
ただ、少なくとも、今までの私の経験では、クライアントさんを信じられなくて困った・・・ということはありません。
ひとつには、「私たちはみな無限の可能性を持っている」ということを、私自身が信じているから。クライアントさんもそういう「無限の可能性」を持っている一人である、と思うことは、難しいことではありません。(とは言え、このことは、例えば、私が今からフィギュア・スケートのオリンピック選手になれる、と信じている、ということではありませんよ!)
そして一方で、「(私が)信じる」ということによって、そういった「無限の可能性」が開花するのだ、ということをコーチングの中でも外でも実感しているからです。○○だから信じる、というように、理由があって信じる、ということでは必ずしもないのです。むしろ、信じるから○○になる、といういわば根拠のない(!)「信」こそが、すべての始まりである、という経験値と感覚をコーチとしてだけではなく一人の人間として持っているからです。
もちろん、私なりに根拠があることが多いですよ。というか、そっちの方が、圧倒的に多い!!そしてそのことに気がついていないのはクライアントさんだけ、なんてことが、本当に、とっても、と〜〜っても、多いです(というか、ほとんどの場合かも・・・??)。
ただ、私なりに「根拠があること」、が必ずしも「信」の一番大きな理由ではないのです。「これこれこれなので、ほら、結果が出ますよ」という「説明」は、一見説得力があるようで、本当には大きな力を持ち得ない、と私は感じています。
「信」は因果関係における「果」ではなく、むしろ「因」であると思います。
つまり、何らかの理由や根拠があってその結果として私がクライアントさんを信じる、ということでないのです。私がクライアントさんを信じる、そこから始まるのです。
そして、これって・・・「仕事だから」だけでは、なかなか、できない。そうも感じています。
「他信」。これができることはコーチとして仕事をする上で最も大事な要素だと思います。一方で、仕事の枠組みだけとらえていると、これはできないのです。
仕事としてコーチングをしているのですが、どうしたって、一人の人間としてのいろ〜んなものがこの「仕事」に出てきます。どういう仕事でもそうなのだと思いますが、コーチングは特にそういう部分が強い仕事だと感じています。

